ねむるまちの ほしあつめ

まちは ねむるまえの じゅんびをしています。
にじいろの カーテンが しずかに とじられて
おもての 小さなあかりが ひとつずつ ともっていくと
まちじゅうが そっと ひといきつくような 気持ちになります。
このまちには 「ほしあつめ」の ひとたちが います。
ひとけのなくなった 夜のまちを
すこし ふしぎな 小さな かごを もって
とことこ あるいているのです。

あるくたびに かごのなかで
ほしのつぶが ころころ ゆれます。
それは 空にうかぶ ほんものの ほしではなくて
だれかの まぶたのうらに 光っていた
ひとひらの おもいでのような
ゆめの すきまから こぼれた ひかりのつぶ。
「これは きょうの わらいごえ」
「こっちは 夜に とけた こころのためいき」
そんなふうに ひとつずつ
ちがう ぬくもりを もった ほしのつぶたちを
ひとびとの ねむりのそばから そっと ひろっていきます。

「ほしあつめ」の ひとたちは
みんな とても しずかに ほしを あつめます。
すやすやと ねむる まどべの した
かかれた てがみの うえ
なにかを 考えながら とまった えんぴつの そば。
そこに そっと ふれては
小さな ためいきのような ひかりを
ひとつ かごに おさめていくのです。

このまちの 夜は
ほしのつぶで できています。
ひろい 夜空にも
つめたい 道路にも
とおくで ひかる タクシーのライトにも
ぜんぶ 小さな だれかの おもいが
すこしずつ まざっています。
でも まざりすぎることは ありません。
「ほしあつめ」の ひとたちが
それを ちょうどよく よりわけて
空の ほうへ たしかに かえしているからです。

ほしを あつめる ひとたちが さいごに いくのは
まちの いちばん 高い おかのうえにある
「ねむりの たねばこ」
そこは だれも 見たことが ないけれど
たしかに 夜になると そこへ むかう こみちが あらわれます。
そこに あつめた ほしを そっと いれると
まるで うたのように 小さな とびらが ひらいて
あたらしい ねむりのひとつぶが
夜空に うかんでいくのです。

そして その ひかりをみて
べつのまちで だれかが すこし こころを ほどいて
ゆっくりと ゆめのなかへ はいっていきます。
だから このまちでは
だれかの ほしが だれかの ねむりを つくっていて
そのねむりが また あたらしい ほしを うむのです。

まちは もう すっかり しずかになりました。
「ほしあつめ」の ひとたちは
かごを からっぽにして
そっと きえていきます。
つぎに あつめられるのは
どんな ほしでしょう。
きょうの きみの ひとこと?
それとも あのときの えがお?
だいじょうぶ。
ぜんぶ やさしく あつめられて
ちゃんと ねむりの どこかで
ひかりに なっています。

まちは ねむるまえの じゅんびをしています。
にじいろの カーテンが しずかに とじられて
おもての 小さなあかりが
ひとつずつ ともっていくと
まちじゅうが
そっと ひといきつくような 気持ちになります。
このまちには
「ほしあつめ」の ひとたちが います。
ひとけのなくなった 夜のまちを
すこし ふしぎな 小さな かごを もって
とことこ あるいているのです。

あるくたびに かごのなかで
ほしのつぶが ころころ ゆれます。
それは
空にうかぶ ほんものの ほしではなくて
だれかの まぶたのうらに 光っていた
ひとひらの おもいでのような
ゆめの すきまから こぼれた
ひかりのつぶ。

「これは きょうの わらいごえ」
「こっちは 夜に とけた こころのためいき」

そんなふうに ひとつずつ
ちがう ぬくもりを もった ほしのつぶたちを
ひとびとの ねむりのそばから
そっと ひろっていきます。

「ほしあつめ」の ひとたちは
みんな とても しずかに ほしを あつめます。
すやすやと ねむる まどべの した
かかれた てがみの うえ
なにかを 考えながら とまった
えんぴつの そば。
そこに そっと ふれては
小さな ためいきのような ひかりを
ひとつ かごに おさめていくのです。

このまちの 夜は
ほしのつぶで できています。
ひろい 夜空にも
つめたい 道路にも
とおくで ひかる タクシーのライトにも
ぜんぶ 小さな だれかの おもいが
すこしずつ まざっています。
でも まざりすぎることは ありません。
「ほしあつめ」の ひとたちが
それを ちょうどよく よりわけて
空の ほうへ
たしかに かえしているからです。

ほしを あつめる ひとたちが
さいごに いくのは
まちの いちばん 高い おかのうえにある
「ねむりの たねばこ」
そこは だれも 見たことが ないけれど
たしかに 夜になると
そこへ むかう こみちが あらわれます。
そこに
あつめた ほしを そっと いれると
まるで うたのように
小さな とびらが ひらいて
あたらしい ねむりのひとつぶが
夜空に うかんでいくのです。

そして その ひかりをみて
べつのまちで
だれかが すこし こころを ほどいて
ゆっくりと
ゆめのなかへ はいっていきます。
だから このまちでは
だれかの ほしが
だれかの ねむりを つくっていて
そのねむりが また
あたらしい ほしを うむのです。

まちは もう すっかり しずかになりました。
「ほしあつめ」の ひとたちは
かごを からっぽにして
そっと きえていきます。
つぎに あつめられるのは
どんな ほしでしょう。
きょうの きみの ひとこと?
それとも あのときの えがお?
だいじょうぶ。
ぜんぶ やさしく あつめられて
ちゃんと ねむりの どこかで
ひかりに なっています。