
「ひとーつ、ふたーつ、みっつ…」
そんなふうに、かぞえても
今夜は ひつじが こない。
いつもなら
やわらかい毛を ふわふわゆらして
のそのそと くるはずなのに。
きょうにかぎって
どこからも 「めぇ」も しない。
「もしかして、もう ねむってしまったのかな?」
ベッドのうえで ひとりのこされたまま
あなたは ふしぎに 思います。
しーんとした 部屋のなか
ひつじのいない よるは
ちょっぴり ひろくて さみしい。
だけど
よく見ると、べつの ものたちが
そっと あなたのところに きていました。
まず、カーテンのすきまから
すぅーっと はいってきたのは
かぜのつかい。
とても ちいさくて 見えないけれど
かみの毛の さきっちょに そっとふれると
「おやすみなさい」って あいさつをしてくれるよう。
つぎに、どこからか
「ことん ことん」と ひびくのは
まどべの しずくたち。
今日いちにちの 話を
ガラスに ちょこんと のこして
また おりていきます。
そのしずくのなかに
ちいさな 声が すこしだけ のこっていて
よく きくと
「また あしたも だいじょうぶだよ」
そんなふうに きこえる気も するのです。
そのあと すこしして
とん…と おちたのは
まどのそとの ほしのかけら。
それは はねのように かるくて
ふれると すこしだけ いい音がします。
「ぴん」と はじけた その音は
あなたのまくらの中に しずかに まぎれて
どこか あたたかくなりました。
いつのまにか
部屋は しずかな なかまに かこまれて
ひつじが こなくても
なんだか やすらぐ
そんな よるに なってきました。
そして
よるのおわりのころ
あなたは 見えない あしおとを ききます。
「とん… とん…」
おそく おそく ちかづいてくる音。
それは
ひつじの うしろあしだけの音。
あぁ 今夜は
ひつじたちも ねむたくて
すこしだけ おそくなってしまったのです。
けれど
もう あなたは そのころには
やわらかい まくらのうえで
ゆっくりと まぶたを とじていました。
ひつじは あなたのよこに ちょこんと すわって
ひと声だけ
「めぇ」と ちいさく ないて
それから そっと
あなたのゆめの中へ とびこんでいきました。
そして 今夜も
ゆっくり ゆっくり
やさしい ねむりが はじまるのです。
おやすみなさい。

「ひとーつ、ふたーつ、みっつ…」
そんなふうに、かぞえても
今夜は ひつじが こない。
いつもなら
やわらかい毛を ふわふわゆらして
のそのそと くるはずなのに。
きょうにかぎって
どこからも 「めぇ」も しない。
「もしかして
もう ねむってしまったのかな?」
ベッドのうえで ひとりのこされたまま
あなたは ふしぎに 思います。
しーんとした 部屋のなか
ひつじのいない よるは
ちょっぴり ひろくて さみしい。
だけど
よく見ると、べつの ものたちが
そっと あなたのところに きていました。
まず、カーテンのすきまから
すぅーっと はいってきたのは
かぜのつかい。
とても ちいさくて 見えないけれど
かみの毛の さきっちょに そっとふれると
「おやすみなさい」って
あいさつをしてくれるよう。
つぎに、どこからか
「ことん ことん」と ひびくのは
まどべの しずくたち。
今日いちにちの 話を
ガラスに ちょこんと のこして
また おりていきます。
そのしずくのなかに
ちいさな 声が すこしだけ のこっていて
よく きくと
「また あしたも だいじょうぶだよ」
そんなふうに きこえる気も するのです。
そのあと すこしして
とん…と おちたのは
まどのそとの ほしのかけら。
それは はねのように かるくて
ふれると すこしだけ いい音がします。
「ぴん」と はじけた その音は
あなたのまくらの中に しずかに まぎれて
どこか あたたかくなりました。
いつのまにか
部屋は しずかな なかまに かこまれて
ひつじが こなくても
なんだか やすらぐ
そんな よるに なってきました。
そして
よるのおわりのころ
あなたは 見えない あしおとを ききます。
「とん… とん…」
おそく おそく ちかづいてくる音。
それは
ひつじの うしろあしだけの音。
あぁ 今夜は
ひつじたちも ねむたくて
すこしだけ おそくなってしまったのです。
けれど
もう あなたは そのころには
やわらかい まくらのうえで
ゆっくりと まぶたを とじていました。
ひつじは
あなたのよこに ちょこんと すわって
ひと声だけ
「めぇ」と ちいさく ないて
それから そっと
あなたのゆめの中へ とびこんでいきました。
そして 今夜も
ゆっくり ゆっくり
やさしい ねむりが はじまるのです。
おやすみなさい。