あわい色の夜のひこうき

ねむれない夜は
カーテンのすきまから
夜空がのぞいてくることがあります。
とくに よくはれていて
でも まっくらというわけでもなくて
月が おおきなまなざしのように
空を ぼんやり てらしているとき
そんな夜には
夜のひこうきが とびます。

ひこうきは おとを たてません。
ぶーんとも ごーとも いいません。
ただ しずかに
すーっと 夜のあいだを すべっていきます。
とびたつときの音も
すれちがうときの音も
ほとんど きこえません。
だけど 目をとじて
からだを しずかにしていると
こころの うらがわのほうに
なにかが ふれていくような気がするのです。

そのひこうきには
切符が いりません。
すわっていたら
ねていたら
あるいは そっと 目をとじていたら
とつぜん のっていることがあります。
気づいたときには
もう ふわりと 空のうえ。
あわい色の夜を
すべっているところです。

窓のそとは ふしぎな色。
あおでもなく
むらさきでもなく
すみれいろでもなく
でも どれでも あるような
そんな やわらかい ひかりが
とびかっています。
みえない羽が 羽ばたく音がして
ひこうきのはばたきが すこしゆれて
すこしずつ
こころのなかが すーっとしていきます。

まどぎわのせきに こしかけて
うすい毛布にくるまって
となりには だれも いませんが
だれかが そっと となりにいるような気もします。
声は きこえませんが
気持ちは とおっているような
あんしんのような
ぬくもりのような
どこにも なかったようで
たしかに ここにあるものが
そこには あります。

このひこうきは
どこにも いきません。
うえでも したでもなく
右でも 左でもなく
ただ いまいるところから
すこしだけ はなれたところに
すこしだけ うえに
いまよりも ちょっとだけ やさしい場所に
すーっと うつしてくれるだけです。

ひこうきのなかには
たくさんの ひかりがあります。
あわいピンク
にじんだブルー
すこし あたたかい きいろ。
おおきく ひろがった あかりのなかで
みんな しずかに めをとじて
やがて すこしずつ
うとうとしてきます。

となりの せきに
しろくて ちいさな鳥が とまりました。
なにも しゃべりません。
ただ すこしだけ
こっちを みて
それから
くちばしで そっと 羽をととのえると
ちいさな 羽ばたきで
また どこかへ とびたっていきました。
あとにのこったのは
すこしだけ あたたかい空気。
そして
その羽ばたきといっしょに
まぶたが おもくなっていきます。

ひこうきは もうすぐ
やわらかい雲のうえに おりていきます。
ちかくに 街のあかりが みえてきました。
ゆめのなかの おやすみの町。
とびらが しずかに ひらいて
まわりの音が すこし きえていって
こころも からだも もう
ねむりの中に ゆっくりと とけていきます。

このひこうきに
また のれるかどうかは わかりません。
でも 空をみあげるたび
あの色を 思い出せたなら
また どこかの夜に
ふわりと あわい光のなかへ いけるかもしれません。
いまは ただ
しずかに 目をとじて
あたたかい毛布に つつまれて
おやすみなさい。

ねむれない夜は
カーテンのすきまから
夜空がのぞいてくることがあります。
とくに よくはれていて
でも まっくらというわけでもなくて
月が おおきなまなざしのように
空を ぼんやり てらしているとき
そんな夜には
夜のひこうきが とびます。

ひこうきは おとを たてません。
ぶーんとも ごーとも いいません。
ただ しずかに
すーっと 夜のあいだを すべっていきます。
とびたつときの音も
すれちがうときの音も
ほとんど きこえません。
だけど 目をとじて
からだを しずかにしていると
こころの うらがわのほうに
なにかが ふれていくような気がするのです。

そのひこうきには
切符が いりません。
すわっていたら
ねていたら
あるいは そっと 目をとじていたら
とつぜん のっていることがあります。
気づいたときには
もう ふわりと 空のうえ。
あわい色の夜を
すべっているところです。

窓のそとは ふしぎな色。
あおでもなく
むらさきでもなく
すみれいろでもなく
でも どれでも あるような
そんな やわらかい ひかりが
とびかっています。
みえない羽が 羽ばたく音がして
ひこうきのはばたきが すこしゆれて
すこしずつ
こころのなかが すーっとしていきます。

まどぎわのせきに こしかけて
うすい毛布にくるまって
となりには だれも いませんが
だれかが そっと となりにいるような気もします。
声は きこえませんが
気持ちは とおっているような
あんしんのような
ぬくもりのような
どこにも なかったようで
たしかに ここにあるものが
そこには あります。

このひこうきは
どこにも いきません。
うえでも したでもなく
右でも 左でもなく
ただ いまいるところから
すこしだけ はなれたところに
すこしだけ うえに
いまよりも ちょっとだけ やさしい場所に
すーっと うつしてくれるだけです。

ひこうきのなかには
たくさんの ひかりがあります。
あわいピンク
にじんだブルー
すこし あたたかい きいろ。
おおきく ひろがった あかりのなかで
みんな しずかに めをとじて
やがて すこしずつ
うとうとしてきます。

となりの せきに
しろくて ちいさな鳥が とまりました。
なにも しゃべりません。
ただ すこしだけ
こっちを みて
それから
くちばしで そっと 羽をととのえると
ちいさな 羽ばたきで
また どこかへ とびたっていきました。
あとにのこったのは
すこしだけ あたたかい空気。
そして
その羽ばたきといっしょに
まぶたが おもくなっていきます。

ひこうきは もうすぐ
やわらかい雲のうえに おりていきます。
ちかくに 街のあかりが みえてきました。
ゆめのなかの おやすみの町。
とびらが しずかに ひらいて
まわりの音が すこし きえていって
こころも からだも もう
ねむりの中に ゆっくりと とけていきます。

このひこうきに
また のれるかどうかは わかりません。
でも 空をみあげるたび
あの色を 思い出せたなら
また どこかの夜に
ふわりと あわい光のなかへ いけるかもしれません。
いまは ただ
しずかに 目をとじて
あたたかい毛布に つつまれて
おやすみなさい。