ほしのスープやさんと よるのリス

あるところに
ちいさなスープやさんがありました。
おみせは　山の上にあります。
まわりには　ほしが　いっぱい。
とても　しずかな　ところです。
おみせの　なまえは
「ほしのスープやさん」
おみせをしているのは
しろい　ふくをきた
くまの　クーク。
おきゃくさんは
ねむれない　どうぶつたちです。

あるよる、ドアのそとから
カサカサ カサカサ　という音がしました。
まどのすみで
こそこそ　うごく　ちいさなかげ。
「こんばんは」
「……うん、こんばんは」
やってきたのは
ちょっと　せっかちそうな　リスでした。

「クーク、たいへんなの。
こころが　ぐるぐるしてて
なにから　おちつければいいのか　わからなくなっちゃって」
クークは　にっこり　うなずいて
「じゃあ、“ととのえなおすスープ”を　つくろうか」

くつくつ
ぽこぽこ
おなべのなかには
くさのにおいの　ちいさなまめ
きざんだパセリと　しろいまめのすじ
それから　しゃきしゃきした　れんこん。
じっくり　じっくり　ひをいれて
とろみがつくまで　まぜつづけます。
「ととのわない日は　まぜなおせば　だいじょうぶ」

スープが　できるころには
リスの　からだも　すこしずつ　うごきをとめて
じっと　クークの手のなかを　みつめていました。

「どうぞ」
リスは　しずかに　スプーンをうけとって
ひとくち　すーっと　くちにいれました。

「……あ」
リスは　おもわず　ためいきを　ひとつ
「これ、きもちが　まるくなってくる…」
クークは　うなずいて
「ぐるぐるを　すこしずつ
ころころにしてくれる　スープなんだ」

スープのあと
リスは　うすいマフラーを　くびにまいて
「また、ころがしにくるね」
と　つぶやきました。

ドアの外で
かすかに　まつぼっくりが　ころん　と　なりました。
クークは　その音に　にっこりして
そっと　ランプをけしました。

おみせのなかに　のこるのは
あたたかな　においと　ちいさな　ゆげだけ。
クークは　まどのそとをながめながら
やさしく　つぶやきました。
「きょうも　いいゆめが　みられますように」