
あるところに
ちいさなスープやさんがありました。
おみせは 山の上にあります。
まわりには ほしが いっぱい。
とても しずかな ところです。
おみせの なまえは
「ほしのスープやさん」
おみせをしているのは
しろい ふくをきた
くまの クーク。
おきゃくさんは
ねむれない どうぶつたちです。
あるよるのことです。
まどのそとに くろいネコがすわっていました。
まるい からだを ふわふわのしっぽで くるんで
ランプのひかりに 目をほそめています。
「こんばんは」
「こんばんは」
クークが ドアをあけると
ネコは のそのそと はいってきました。
「ねむれないの?」
クークが きくと
ネコは しっぽを ふるりとゆらして こたえました。
「……ねむってしまうと
だれかが きたとき きづけなくなりそうで」
クークは うなずいて
「それなら、“まってるスープ”を つくろうね」
と いって おなべをだしました。
くつくつ
ぽこぽこ
おなべのなかには
とうもろこしと ミルク
それから ゆっくりいためた たまねぎ。
ことこと とろみがついてきたら
すこしだけ チーズを ちらして
まるい パンを そえて できあがり。
「どうぞ」
クークが スープを テーブルにおくと
ネコは おしりをまるめて すわりました。
「これは……“だれかをまってる”あじだね」
ネコは ふふっと 声をもらして
すこしずつ スープを のみました。
「なんで わかるの?」
クークが きくと
ネコは しっぽで まどをさして こたえました。
「まってるあいだって ちょっとさみしくて
でも ちょっとだけ うれしい」
「このスープも そんなかんじが したの」
クークは にっこり うなずいて
「そのうちね、スープのあじだけが のこったりするんだよ」
と こたえました。
ネコは さいごのひとくちをのんで
「それでも また だれかをまつんだよね」
と やさしい声で いいました。
クークは まどのそとをみて
ほしのうごきを ゆっくり みつめました。
「うん。まつって たぶん
あたまよりも こころが やってることなんだよね」
そのよる ネコは ねむらずに
おみせのすみに すわっていました。
だけど あたまは とても しずかで
からだは ぽかぽかしていて
“まっている”ということを
まるごと あたたかく だきしめているように みえました。
クークは そのすがたを ちらりとみて
おなべを ていねいに あらいながら
そっと つぶやきました。
「いいよるに なりますように」

あるところに
ちいさなスープやさんがありました。
おみせは 山の上にあります。
まわりには ほしが いっぱい。
とても しずかな ところです。
おみせの なまえは
「ほしのスープやさん」
おみせをしているのは
しろい ふくをきた
くまの クーク。
おきゃくさんは
ねむれない どうぶつたちです。
あるよるのことです。
まどのそとに くろいネコがすわっていました。
まるい からだを ふわふわのしっぽで くるんで
ランプのひかりに 目をほそめています。
「こんばんは」
「こんばんは」
クークが ドアをあけると
ネコは のそのそと はいってきました。
「ねむれないの?」
クークが きくと
ネコは しっぽを ふるりとゆらして
こたえました。
「……ねむってしまうと
だれかが きたとき きづけなくなりそうで」
クークは うなずいて
「それなら、“まってるスープ”を つくろうね」
と いって おなべをだしました。
くつくつ
ぽこぽこ
おなべのなかには
とうもろこしと ミルク
それから ゆっくりいためた たまねぎ。
ことこと とろみがついてきたら
すこしだけ チーズを ちらして
まるい パンを そえて できあがり。
「どうぞ」
クークが スープを テーブルにおくと
ネコは おしりをまるめて すわりました。
「これは……“だれかをまってる”あじだね」
ネコは ふふっと 声をもらして
すこしずつ スープを のみました。
「なんで わかるの?」
クークが きくと
ネコは しっぽで まどをさして こたえました。
「まってるあいだって ちょっとさみしくて
でも ちょっとだけ うれしい」
「このスープも そんなかんじが したの」
クークは にっこり うなずいて
「そのうちね
スープのあじだけが のこったりするんだよ」
と こたえました。
ネコは さいごのひとくちをのんで
「それでも また だれかをまつんだよね」
と やさしい声で いいました。
クークは まどのそとをみて
ほしのうごきを ゆっくり みつめました。
「うん。まつって たぶん
あたまよりも こころが やってることなんだよね」
そのよる ネコは ねむらずに
おみせのすみに すわっていました。
だけど あたまは とても しずかで
からだは ぽかぽかしていて
“まっている”ということを
まるごと あたたかく だきしめているように
みえました。
クークは そのすがたを ちらりとみて
おなべを ていねいに あらいながら
そっと つぶやきました。
「いいよるに なりますように」

